「良い香り」とされるものが、実は誰かをひそかに苦しめているとしたら、あなたはどのように感じるでしょうか?近年、「香害」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、香水、柔軟剤、芳香剤などの香料が原因で、不快感や体調不良を引き起こす社会問題です。特に、未来を担う子どもたちにとって、この「香害」は、想像以上に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
見えない「香り」が引き起こす深刻な問題「香害」
私たちは日々の生活の中で、さまざまな香りに囲まれて暮らしています。洋服からふわりと香る柔軟剤、部屋を彩る芳香剤、身だしなみとしてまとう香水など、香りを楽しむことは、多くの人にとって豊かな生活の一部かもしれません。しかし、その香りが、ある人にとっては耐え難い苦痛となり、日常生活を著しく困難にさせている現実があります。
「香害」とは、これらの人工的な香料によって、頭痛、めまい、吐き気、集中力の低下、呼吸困難といった身体的な症状や、精神的なストレスを引き起こす現象を指します。特に、感覚過敏や化学物質過敏症を持つ人々にとって、香りは避けがたい攻撃となり、活動の制限や体調不良の原因となります。そして、残念ながら、この問題は大人だけでなく、感受性の高い子どもたちにも深く影を落としています。
アース・キッズ株式会社の「包括的無香料行動ポリシー」宣言
そんな中、「子どもたちのために。以上。」という理念を掲げ、「すべての子どもたちが公平に可能性にチャレンジできる社会を創る」というビジョンを持つアース・キッズ株式会社が、子どもたちを香りのストレスから守るため、「包括的無香料行動ポリシー」を宣言しました。これは、東京都内および神奈川県内で16拠点の児童発達支援・放課後等デイサービス「スタジオそら」を運営する同社が、子どもたちの健やかな成長を保障する環境を整えることを重視した結果です。
このポリシーの目的は、単にアース・キッズや「スタジオそら」に通う子どもたちを守るだけにとどまりません。香りに敏感なすべての子どもたちが、安心して過ごせる社会を目指すための、一歩踏み込んだ取り組みなのです。この宣言は、企業としての社会的責任を果たすだけでなく、社会全体へ「香害」への意識を高めるきっかけを提供しようとするものです。
「香害」とは何か?知っておきたい感覚過敏と化学物質過敏症
「香害」がなぜこれほどまでに深刻な問題となるのかを理解するためには、その背景にある「感覚過敏」と「化学物質過敏症」について知ることが不可欠です。
感覚過敏:嗅覚がもたらす困難
発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD)のある方の中には、嗅覚に過敏さを持つ方が一定数いらっしゃいます。これは「嗅覚過敏」と呼ばれ、一般の人には心地よく感じられる香りでも、その人にとっては非常に強く感じられたり、特定の匂いの種類が不快に感じられたりする状態です。
例えば、ある人には「良い香り」と感じられる柔軟剤の匂いが、嗅覚過敏のある子どもにとっては「刺激臭」となり、頭痛や吐き気を引き起こすことがあります。また、その強い刺激によって、集中力が低下したり、不安を感じてその場に居られなくなったり、特定の活動を拒否したりすることもあります。学校生活や集団での活動において、このような状況が続けば、子どもたちは大きなストレスを感じ、社会参加の機会を失い、学習や発達に支障をきたす可能性も否定できません。
化学物質過敏症(MCS):微量な化学物質が引き起こす多様な症状
一方、「化学物質過敏症(MCS)」は、香料を含むごく微量の化学物質に触れることで、頭痛、めまい、吐き気、疲労感、皮膚炎、呼吸器症状など、非常に多様な体調不良が引き起こされる病気です。この症状は、ある特定の化学物質に暴露された後に発症し、その後は非常に低い濃度の化学物質に対しても反応するようになる特徴があります。原因となる化学物質は、洗剤、柔軟剤、芳香剤の香料だけでなく、農薬、建材、排気ガスなど多岐にわたります。
化学物質過敏症は、まだ社会的な認知度が十分とは言えず、診断が難しいケースも少なくありません。症状が多岐にわたるため、他の病気と間違われたり、精神的なものと誤解されたりすることもあります。しかし、この病気は身体的なメカニズムに基づいた明確な疾患であり、適切な理解と配慮が必要です。特に懸念されるのは、子どもの発症率が成人よりも高いというデータです。これは、胎児期や乳児期を含む成長の過程での化学物質暴露(発達神経毒性:DNT)が、発達障害の増加と関連している可能性が指摘されていることからも、非常に重要な問題と言えるでしょう。
アース・キッズが実践する具体的な「無香料行動ポリシー」
アース・キッズ株式会社が宣言した「包括的無香料行動ポリシー」は、香害から子どもたちを守るための具体的な行動指針として、以下の6つの項目を掲げています。
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本社及び全ての事業所で設置する備品(手洗い石けん、消臭剤など)の無香料化。選択可能な場合は化学物質不使用品を使用。
- 日用品から香料を排除することで、施設内の環境を徹底的に無香料に保ちます。化学物質不使用品を選ぶことで、より安全な環境を提供します。
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従業員に対し「香害」に関する研修を実施。
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香害の知識を深め、従業員一人ひとりがこの問題への理解を深めることで、日々の業務や対人関係において適切な配慮ができるようになります。
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業務中に使用する制汗スプレー・ボディシートに関して、無香料品を支給。
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従業員の身だしなみに必要な製品も無香料に統一することで、職場全体から香料を排除し、子どもたちへの影響を最小限に抑えます。
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業務中の香水の使用を制限。
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香水は香りが強く広がりやすいため、使用を制限することは香害対策として非常に効果的です。
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業務日に使用する衣類(柔軟仕上げ剤・香り付き洗剤を含む)・整髪料・化粧品・ハンドクリームなどは「香害」に配慮し、可能な範囲で無香料となるよう努める。
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従業員個人の日用品にまで配慮を求めることで、施設内外での香りの持ち込みを防ぎ、子どもたちが安心して過ごせる環境を維持します。
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事業所において「香害」に関するポスターを設置し、情報を広く周知する。
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「香りが誰かの害になる。」というメッセージを視覚的に伝えることで、来訪者や地域住民にも香害への理解と協力を促し、社会全体の認知度向上に貢献します。
これらの取り組みは、単なる表面的な対策に留まらず、従業員の意識改革から環境整備、そして社会への啓発活動まで、多角的に香害問題に取り組むアース・キッズの強い覚悟を示しています。アース・キッズのウェブサイトでは、事業内容や理念について詳しく紹介されています。興味のある方はぜひご覧ください。
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アース・キッズ株式会社: https://earth-kids.com/
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スタジオそら: https://studiosora.jp/
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チャイルドラボ: https://child-lab.jp/
代表・高見裕一氏のメッセージに学ぶ「香害」のリアル
アース・キッズの代表取締役である高見裕一氏は、ご自身が化学物質過敏症の当事者であり、その経験から「香害」の深刻さを肌で感じてきました。彼のメッセージは、この問題のリアルな側面を私たちに教えてくれます。
高見氏が原因不明の体調不良に襲われたのは2008年のことでした。あらゆる化学合成された「良い香り」とされるものが、めまい、頭痛、発汗、嘔吐、下痢といった多様な症状を引き起こし、時には1時間その環境に身を置くだけで2日間立ち上がることができないほどの苦痛を味わったといいます。家族からは「クサイクサイ病」と疎まれ、精神的にも非常に厳しい状況だったそうです。当時、「化学物質過敏症(MCS)」という病気は一般に認知されておらず、特定されるまでに2年間という長い時間を要しました。
衝撃的なデータが示す「香害」の広がり
高見氏が指摘する最新の調査結果は、香害が一部の特殊な問題ではないことを明確に示しています。
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国民の7割以上が人工香料で不快な経験
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国民の4割以上が人工香料による体調不良を経験
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推定1,000万人が化学物質過敏症(国民の約8%)
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子どもの12%が化学物質過敏症の症状を呈する(成人より高い発症率)
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米国では5人に1人が化学物質不耐症(=化学物質過敏症)
これらのデータは、香害が私たちの社会に深く根付いた、広範囲にわたる健康問題であることを浮き彫りにしています。特に子どもの発症率が高いという事実は、彼らの未来を守るために早急な対策が必要であることを強く訴えかけています。米国での状況は、日本の将来像である可能性も示唆しており、他人事として見過ごすことはできません。
「白い毒物」としての給食着の事例
高見氏の個人的な経験談の中には、香害がどれほど生活に深く入り込んでいるかを示す衝撃的なエピソードがあります。ある日、彼の家に持ち込まれた小学生の子どもの給食着。前の当番の家庭で使われた強烈な匂いの柔軟仕上げ剤が染み付いており、給食着だけでなく、それを入れていた子どものランドセルまでが「汚物と化した」といいます。水だけで何度洗濯してもその匂いは取れず、この給食着の問題は全国ニュースでも取り上げられるほどでした。
この事例は、香りが単に不快なだけでなく、物理的に除去することが困難であり、子どもの大切な学用品にまで影響を及ぼすことを示しています。子どもたちは、このような香りの環境で、毎日を過ごすことを強いられているのです。これは、学習環境の悪化だけでなく、精神的な負担、さらにはアレルギー反応や体調不良を引き起こす可能性もはらんでいます。
「香害」が子どもたちの未来に与える影響
近年、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥・多動症(ADHD)などの発達障害の増加が社会問題となっています。その原因の一つとして、胎児期や乳児期を含めた成長の過程での化学物質暴露、いわゆる発達神経毒性(DNT)が懸念されています。香料に含まれる化学物質が、子どもの脳の発達に悪影響を及ぼす可能性も指摘されており、これは非常に深刻な問題です。
ASDのある方の中には、嗅覚に過敏さがあり、特定の香りによって活動に支障をきたす方がいることは既に述べました。もし、学校や保育園、遊び場といった子どもたちが集まる場所が、常に香料で満たされているとしたらどうでしょうか?彼らは、快適に学ぶことや遊ぶことができず、社会との関わりを避けるようになってしまうかもしれません。これは、子どもたちの健全な成長を阻害し、彼らが持つ可能性を十分に発揮できない環境を作り出すことになります。
レイチェル・カーソンの名著『センス・オブ・ワンダー』は、子どもたちが自然の中で五感を使い、驚きや感動を体験することの重要性を説いています。しかし、化学物質に汚染された環境では、子どもたちが純粋な感覚で世界を体験することは難しくなります。人工的な香りが充満した環境は、子どもたちの繊細な感覚を鈍らせ、あるいは過剰に刺激し、心身の健康に悪影響を与える可能性があるのです。
無香料ポリシーは「予防医学」の実践
アース・キッズ株式会社が高見氏の言葉を借りて「無香料ポリシーはまさに『予防医学』の実践です」と語るように、香害対策は単なる配慮に留まらず、未来の健康を守るための積極的な「予防」であると捉えるべきです。大資本が「良い香り」を打ち出す洗脳的な広告を垂れ流し続けることによって、子どもたちの成長が阻害されることに対して、同社は明確な疑問を呈し、事業体としての行動指針を打ち出しました。
香りの選択は個人の自由であると考える人もいるかもしれません。しかし、その香りが他者の健康を侵害し、特に子どもたちの健やかな成長を妨げる可能性があるならば、私たちはその自由の範囲と責任について深く考える必要があります。アース・キッズの取り組みは、「児童福祉の使命である『すべての子どもの最善の利益を守る』ことに直結している」という強い信念に基づいています。これは、社会全体が共有すべき価値観ではないでしょうか。
私たち一人ひとりにできること:香害のない社会を目指して
香害のない社会を目指すためには、アース・キッズ株式会社のような企業の取り組みだけでなく、私たち一人ひとりの意識と行動が不可欠です。悩みに寄り添い、共に未来を創るために、日常生活でできることを考えてみましょう。
日常生活での配慮
- 無香料製品の選択: 洗剤、柔軟剤、消臭剤、シャンプー、石鹸、化粧品、ハンドクリームなど、香りのある製品を無香料のものに切り替えることから始められます。最近では、無香料製品の選択肢も増えています。
- 香水や香りの強い製品の使用を控える: 特に、職場、学校、病院、公共交通機関など、不特定多数の人が集まる場所では、香水や香りの強いヘアスプレー、制汗剤などの使用を控えましょう。他者への配慮が求められます。
- 換気を心がける: 自宅や職場で香料製品を使用する場合は、こまめな換気を心がけ、香りがこもらないようにしましょう。また、香りの種類によっては、換気だけでは完全に除去できない場合があることも理解しておく必要があります。
- 衣類からの香りの持ち込みに注意: 他の家庭で洗濯された衣類(例:子どもの給食着、体操服など)から強い香りがする場合、それは香害の原因となる可能性があります。可能な限り、無香料の洗剤や柔軟剤を使用するよう、周囲に協力を求めることも大切です。
情報収集と啓発
- 「香害」に関する正しい知識を学ぶ: 香害がどのようなメカニズムで起こり、どのような影響があるのか、正しい知識を身につけることが第一歩です。公的機関や専門家の情報源を参考にしましょう。
- 周囲の人に優しく伝える努力: 香害について知らなかったり、意識していなかったりする人も多くいます。攻撃的ではなく、悩みに寄り添う姿勢で、香害の問題を優しく伝えてみましょう。具体的な症状や困っていることを共有することで、理解が深まることがあります。
- 啓発ツールの活用: アース・キッズが制作した「香りが誰かの害になる。」ポスターは、社会的認知拡大のため無償配布されています。学校や公共施設、地域の掲示板など、設置を検討できる場所があれば、積極的に問い合わせて活用しましょう。
企業や行政への働きかけ
- 無香料製品の需要を高める: 消費者が無香料製品を選ぶことで、企業は無香料製品の開発や販売に力を入れるようになります。これは市場全体の変化を促す力になります。
- 公共施設での無香料化の推進: 地域の公共施設や学校、医療機関などに対し、無香料化の取り組みを要望する声を届けることも重要です。行政がガイドラインを策定したり、無香料環境を整備したりすることで、多くの人が安心して過ごせる場所が増えます。
「香りが誰かの害になる。」このシンプルなメッセージを心に留め、私たち一人ひとりが意識を変え、行動することで、香害のない社会へと確実に近づくことができます。
まとめ:共に創る、すべての子どもが安心して過ごせる社会
アース・キッズ株式会社の「包括的無香料行動ポリシー」宣言は、子どもたちの健やかな成長を願う強い思いから生まれました。感覚過敏や化学物質過敏症の子どもたちが、香りのストレスから解放され、公平に可能性にチャレンジできる社会を創るための、具体的な一歩です。
同社は、「一人ひとりの社員の行動から社会を変えていくという覚悟」をもって、この香害をなくす取り組みを進めています。この取り組みは、私たちに、心地よい香りとは何か、そして他者への配慮とは何かを改めて問いかけています。
私たちは、この問題から目を背けることなく、アース・キッズの取り組みに学び、私たち自身も日常生活の中でできることを見つけ、実践していくべきでしょう。香害のない社会は、すべての子どもたちが安心して学び、遊び、成長できる、より豊かな社会へとつながります。共に協力し、未来の子どもたちのために、香りに満ちた世界ではなく、心穏やかに過ごせる世界を築いていきましょう。
アース・キッズが制作した「香りが誰かの害になる。」ポスターは、無償配布されています。設置を検討される場合は、アース・キッズ株式会社の広報担当までお問い合わせください。
広報担当:川端
TEL :03-3403-4389
FAX :03-3403-4388
画像: カラフルな抽象画を背景に、グレーのスーツを着用した中高年の男性がテーブルに座り、穏やかな笑顔でカメラを見ているポートレート。



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